法人での保険金受取の注意

会社経営をしているとあらゆるリスクに備えなければなりません。社内で専任担当者を設置したり、外部の専門家に依頼したりとリスク管理を行っていると思います。
そして多くの会社が生命保険、損害保険を活用しリスク分散を図っていると思います。
今回は生命保険にフォーカスしてさらに保険金額の設定、保険金受取人の設定の注意点について記載したいと思います。
法人で生命保険を掛ける場合、様々は目的があると思いますが今回は経営者が亡くなった際のリスクを想定し、借入金の返済を生命保険でカバーする事業保障に焦点を絞ります。
例)法人として1億円の借入があり、経営者が連帯保証人となっている。そのため経営者に万が一のことが起きた場合に借入金1億円を返済できる生命保険に加入しておきたい。
(ある生命保険会社からの提案)
定期保険:死亡保険金1億円
契約者:法人
被保険者:経営者 保険金受取人:法人
法人の事業保障として生命保険に加入する場合、注意しなければならないのは税務上の処理となりす。保険料、保険期間、保険料支払期間、解約返戻金の有無、満期返戻金の有無によって税務処理も変わります。
ここでは単純で保険料は全額損金処理、保険金の受取は一括での受取といたします。
1億円の借入に対して、保険金額1億円の生命保険に加入。受取人を法人にしました。
この加入の仕方で問題ないでしょうか?
答え
企業の業績によって変わるが正解になります。
【考え方】
①借入金は1億。万が一経営者が死亡した場合、保険金1億円が会社に支払われます。
②会計上、保険金1億円は益金として計上します。
③他の所得は考慮せず、保険金1億円を借入金の1億円の返済にあて借入金をなくします。
④保険金1億円は益金なので法人所得税の対象となります。法人所得税の実効税率は約33%。(税率の詳細は省略いたします)
⑤保険金1億円に対する法人所得税は3,300万円
⑥3,300万円の納税資金が必要となります。
納税資金3,300万円のキャッシュフローがあれば何も問題ございません。
【生命保険でカバーする場合の対策】
借入金を生命保険でカバーする事業保障の場合は一般的に下記のように考えます。
借入金×1.5=保険金額
先ほどにケースを上記の式にあてはめていきますと下記となります。
1億円×1.5=1.5億円
借入金1億円の場合は保険金額1.5億円の保険に加入する必要があります。
1.5億円を借入金返済に充てると5,000万円が手元に残ります。益金1.5億円の法人税は
約4,500万円です。
よって借入金も法人税もカバーすることが可能です。
※説明の都合上シンプルな考え方で整理しています。税務については専門家へご相談を
お願いいたします。
借入金は毎月返済しているのでそんなに高い保険金額を設定する必要がないとお考えになると思います。
それも正解です。今回は利息分を考慮せずに考え方だけお伝えいたしました。
基本原則を理解することが一番大切です。基本原則を理解出来ていれば、その時に合わせた対策を取ることが可能です。
また、今回は生命保険の活用にフォーカスいたしましたが、生命保険を活用することが対策の全てではございませんのであらかじめご理解いただけると幸いです。